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コーチングよりも大切な「カウンセリングの技術」から学ぶ、キャリア支援者の新しい視点

(書籍:『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』小倉広 著)
はじめに
「このままでいいのだろうか」「もっと成長しなければ」——キャリアに悩む方々が口にする言葉です。支援者として寄り添う私たちも、ときに“どう関わればよいのか”と迷うことはないでしょうか。本記事では、小倉広さんの著書『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』を手がかりに、VUCAの時代における支援のあり方を考えます。ゴール達成だけでなく、根本的な「自己への気づき」を促すカウンセリングの力を一緒に見ていきましょう。
本の概要
小倉広さんの『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』は、キャリアや組織の支援に関わる人に向けて、「人が本当に変化するときのプロセス」を丁寧に解説した一冊です。
これまで多くの支援者は「コーチング」の手法を使って、相手の目標達成を助けることに力を注いできました。しかし、小倉さんはVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代においては、明確なゴールを描くこと自体が難しくなっていると指摘します。だからこそ、表面的な課題解決よりも、相手が自分自身の感情に気づき、自己一致していく「カウンセリング」がより重要なのです。
(参考:VUCA(ブーカ)とは?予測不可能な時代に組織・個人に必要となる3つのスキル)。
この本では、カウンセリング・コーチング・ティーチングの違いや順番、感情への向き合い方、具体的な質問法や伝え方まで紹介されています。キャリア支援に携わる方にとって、日々の面談や相談場面ですぐに活かせるヒントが満載の内容です。
「支援とは、相手を変えることではなく、その人が“自分自身に戻る”ことを助けること」——この一文が印象的に響きました。
要点整理:本から学べる3つの大切な視点
1. カウンセリング・コーチング・ティーチングの順番
小倉さんは「まずカウンセリング、次にコーチング、最後にティーチング」と説きます。
受容と共感によって安心をつくる(カウンセリング)→目標達成の方法を探る(コーチング)→知識や方法を伝える(ティーチング)。
この順番を意識することで、支援は一方的ではなく、相手主体のプロセスに変わります。
「焦って解決策を示していないか?」と振り返るだけでも、支援の質は大きく変わるはずです。
2. 外在化による気づきの促進
悩みを“その人自身”から切り離して語る「外在化」は、カウンセリングの重要な技術です。
「仕事の悩み」ではなく「今の部署との関係がうまくいかない」と具体的に言葉にすると、本人の中で問題が整理され、感情にアクセスしやすくなります。
エピソードを語ってもらうことで、気づきが自然に深まっていきます。
支援者として「もっと具体的なエピソードを聞いてみませんか?」と意識することがポイントです。
3. 感情に触れる勇気
カウンセリングではネガティブな感情にあえて触れ、言葉にしてもらうことを大切にします。
怒りや不安といった一次感情は、理性を超えて人を動かす大きな力になるからです。
ただし、支援者が感情の表出を適切にコントロールする必要があります。
キャリア相談の場でも「そこに不安があるんですね」と言葉を返すだけで、相談者の心がほどけていく瞬間があります。
実践のヒント:キャリア支援者ができる具体的アプローチ
Iメッセージで伝える
相談者の言動に対して「あなたはできていない」と伝えると防御反応を生みます。
一方「私はこう感じました」とIメッセージで伝えると、相手は受け取りやすくなります。
キャリアコンサルタントとして「私は少し心配になりました」といった表現を意識してみましょう。
エピソードを聞き出す
履歴書の経歴や成果だけでなく、「一番印象に残っている経験は何ですか?」とエピソードを尋ねてみてください。
The Most(最も〜だったことは?)という問いかけは、本人の価値観や感情を引き出すきっかけになります。
小さな場面から実践する
本書には「ある場面で実践すれば、それがやがて他の場面に“染み出す”」という言葉が登場します。
たとえば、日々の1on1や就活相談の中で一つの質問を変えるだけでも、相談者の表情や答えが変わることがあります。
まずは小さな一歩から始めてみませんか?
補足:コーチングやティーチングの有効性
もちろん、カウンセリングだけが万能ではありません。
短期間で成果を求められる現場や、具体的な知識を必要とする場面では、ティーチングやコーチングの方が効果的です。
大切なのは「状況に応じて手法を使い分ける柔軟さ」。
「いま相談者が本当に必要としている支援は何か?」という視点を持ち続けることが、支援者としての成長につながります。
まとめ
小倉広さんの『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』から学べるのは、「人は受容されることで初めて変わり始める」というシンプルな真実です。
キャリア支援の現場でも、相手を変えようとするのではなく、その人が自分自身に還っていけるように寄り添うこと。
その積み重ねが、相談者の根本的な成長を支える道になります。
「次の面談ではどんな問いを投げかけてみようか?」——そう思えたとき、支援者としての一歩はすでに始まっています。