
はじめに
「もっと人の話をきちんと聞けるようになりたい」
キャリアコンサルタントの実技試験を控え、そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。あるいは、会社で「傾聴が大事」と耳にしたものの、実際にどう学べばいいのか分からず戸惑っている方もいるかもしれません。
結論から言うと、傾聴の本質は「相手が素直な気持ちを安心して表現できる環境を整えること」です。本記事では、中越裕史さんの著書『傾聴の極意 「カウンセリングの神様」カール・ロジャーズの教えと〈これからの聴き方〉』を参考に、その実践のヒントを整理していきます。
本の概要
『傾聴の極意』(著:中越裕史)は、「傾聴とは単なる聞き上手ではなく、人の成長と希望を引き出す力である」という視点から書かれた一冊です。本書の中心にあるのは、カウンセリングの基盤である「受容・共感・自己一致」。これらを別々の要素としてではなく「愛」として捉え直すことで、傾聴の本質が浮かび上がります。
著者は、人間には本来「生命的叡智(=実現化傾向)」が備わっていると説きます。それは、頭で考えすぎると見失いがちですが、心や身体の奥底に眠る“本当の答え”です。傾聴とは、その答えを引き出すための「希望の光」をともす営みであり、カウンセリングやキャリア相談において不可欠な力だと語られています。
試験対策や日常の職場でのコミュニケーションに悩んでいる人にとって、「傾聴を通じて相手の中の希望を信じる」という視点は新鮮ではないでしょうか。
要点整理 ― 『傾聴の極意』から学べること
愛とは「時間を与えること」
精神分析では「愛」とは相手に時間を与えることと定義されるそうです。焦ってアドバイスを伝えるのではなく、ただ共に時間を過ごし、話を聴き切る。その姿勢が「自分は受け入れられている」という安心感につながります。
こうした考え方は、試験のロールプレイでも職場の1on1でも、確かな説得力を持ちますよね。
自己一致こそが信頼の土台
相手の話を聞く前に大切なのは、自分が「無理をしていない状態」でいることです。著者は「自己一致」と呼び、自分の気持ちに素直であることが、相手に安心感を与えると説明しています。例えば、無理に「分かってますよ」という態度を取るより、正直に「まだうまく言葉にできていないけれど聞きたいと思っています」と表現した方が、相談者は心を開きやすくなるのです。
希望は絶望とともにある
相談の場では、相手が「絶望」や「迷い」を語ることもあります。しかし著者は「希望は絶望と共にしか存在し得ない」と言います。暗闇を照らす光のように、絶望の中だからこそ小さな希望が輝く。その希望に耳を澄ませる姿勢こそが、傾聴の力です。
身体感覚を信じる「フォーカシング」
人は頭で考えた答えではなく、身体の奥底にしっくりくる言葉を見つけた時に本当に納得します。本書では「フォーカシング」という手法が紹介され、感覚に寄り添う言葉選びの重要性が語られています。キャリア相談でも、相談者が「これだ」と腑に落ちる瞬間を支えるのは、まさに傾聴です。
実践のヒント ― 今日からできる「傾聴の一歩」
1. 「助言しない」と決めてみる
相談を受けると、つい「こうした方がいい」と言いたくなります。しかし本書は「実現化傾向を信じて待つこと」が大切だと説きます。実技試験でも、相談者が自分の答えに気づけるように促す方が評価につながります。
2. 自分の身体感覚に耳を澄ます
まずは自分自身が、頭ではなく身体の感覚に正直に生きる練習をしてみましょう。「この言葉はしっくり来る」「なんだか違和感がある」と気づくことが、相手の感覚にも寄り添える力につながります。
3. 無理に質問をせず、沈黙してみる
傾聴を学んだ人こそ、「うまく質問しなきゃ」と焦りがちです。しかし「答えは相手の中にある」と信じると、自然に沈黙を受け止め、相手の言葉を待てるようになります。これは試験官が評価する「受容・共感」の姿勢に直結します。
「今日から取り入れられる小さな工夫はどれでしたか?」と自分に問いかけてみてください。
補足視点 ― 傾聴と専門性
もちろん、「傾聴さえあればすべて解決する」というわけではありません。
状況によっては明確な情報提供やアドバイスが必要な場面もあります。特にキャリア相談では、制度や転職市場の知識も不可欠です。傾聴はあくまで基盤であり、その上に専門的な知識をどう組み合わせるかが実践力につながります。
傾聴を「万能の技法」と捉えず、あくまで相手が安心して自分の答えを見つけるための“環境づくり”と考えるとバランスが取りやすいでしょう。
まとめ
『傾聴の極意 「カウンセリングの神様」カール・ロジャーズの教えと〈これからの聴き方〉』(中越裕史)は、「傾聴とは希望を信じ、相手が素直に気持ちを表現できる場を整えることだ」と教えてくれる一冊でした。キャリアコンサルタント試験対策にも、日々の職場での人間関係にも直結する内容です。
傾聴は技術ではなく、姿勢そのもの。今日からできる小さな一歩を重ねることで、きっとあなた自身のコミュニケーションも変わっていくはずです。どうか安心して、その歩みを始めてみてくださいね。